レビュー・インプレッションを書こう!

インターネットの普及以降、オーディオ機器に関するレビューやインプレッションをネットにアップして発信する事が盛んに行われていますが、自分の感想の発信を始めた初期段階では特に色々な思いや葛藤が出て来るものだと思います。今回はいつもと趣向を変えて経験値の比較的浅い方との対話形式で「Thinking Audio的」なレビュー・インプレッションに対する考え方について話を進めてみようと思います。

目次

自分のインプレッションの内容は大丈夫?

ある機器について、以前に自分が書いたインプレと他者のインプレが大きく違う。自分の感性・耳はおかしいのかな?

あなたの書いたインプレはその時点でのあなたの聞こえ方を現すもので、それに良いも悪いもおかしいもありません。従って他者と違っていても何も落ち込む必要はありません。必要以上に気にしないで良いです。後ほど詳しく書きますが、そのインプレはどんな内容でも書いてネットにアップしただけで大きな価値を持つものです。悲観的にならずどんどん発信して行って下さい。

しかし一方で、この様に自分の感性に疑問を感じるのはとても大事な事でもあります。なぜならば、ここで「自分は自分、他者は他者、自分が良ければそれで良いのだ」と100%完全に開き直ってしまうと、そこであなたの感性はほぼ固定化され、成長が止まってしまうからです。

(もちろん、完全なる閉鎖環境に閉じこもり、その中で自分だけで楽しめれば良いというのであればそれはそれで良いと思います。しかし、現にあなたはネットに自分のインプレを公開し、他者のインプレを読んでいる訳で、その時点で完全に鎖国する方向性を放棄し、大きくは他者との意見交換という方向性の中に入り込んでいるのです。そうであるなら、他者の感性(聞こえ)を少しは気にして自分の感性を省みる姿勢は持っておいた方が良いですし、本来は持つべきです。大きくはネットでの発信という他者へ影響を与える可能性の中に身を投じながら、自分は「他者の感性は一切無視しま~す」というのは自分勝手で良いとこ取りの小狡い姿勢ではないでしょうか。本当に「自分は自分、他者は他者」を標榜するのであればネットにわざわざ出張らず書かず自分の日記帳に書いて自分でそれを眺めるだけで十分なはずですから。)

ただ、その疑問を感じる割合が高すぎると自己肯定感が下がりオーディオが楽しくなくなるので、「自分の感性に自信を持つこと」と「自分の感性に疑問を持ち他者の感性を気にすること」それぞれの割合のバランスを自分の精神衛生に最適化することが必要ではあります。

他者のインプレッションを読んだら…

以前とは印象が違って聞こえたら?

他者のインプレ内容を気にして再度その機器を聞き直したら、以前に感じたのと違う印象を受けたよ!

おめでとうございます!あなたの感性はこれで一つ成長したと言えるでしょう。Thinking Audioではこれを「認知の成長」と定義しています。あなたはこれまで自分の認知の中に概念が存在せず聞こえなかった音の項目(Thinking Audioではこれを「ブラインド項目」と定義しています)を他者のインプレというきっかけによって聞こえる様になったという事です。

一度花開いた認知は最初は安定して発揮出来ませんが、引き続き意識していればその内に完全に自分のものとして無意識化で発揮することが出来る様になります。そうなるとこれまで聞いてきた音源や機器がまた違った聞こえ方をする様になります。

オーディオの楽しみの一つはまさにその認知の成長による音楽から受け取れるものの増加にあります。色々な音源を聞き直して下さい。きっとオーディオがもっと楽しくなってくるはずです。

以前と印象は変わらなかったら?

う~ん・・・他者のインプレ内容を気にして再度その機器を聞き直したけれど良く分からなかった・・・

気を落とすことはありません。それはそれで全く問題はありません。「今は分からなかった」ものとして保留し棚上げすれば良いのです。まだあなたにその準備が出来ていなかっただけのことです。 (そしてこれは音楽自体の理解にも通じる所です)

もしかするとその他者のインプレはあなたからは「遠い」音の項目の認知が必要なのかもしれません。Thinking Audioでは、個人個人で音の各項目の認知の獲得の難易度が異なると考えます。その原因は生まれつきなのか、生きて来た過程で形成された傾向なのか、両方なのか分かりませんが、なかなか感覚をつかむのが難しい項目は必ず存在し、それを「遠い」と表現しています。

しかし「遠い」だけで決して獲得不可能なものではありません。自分の中の準備が整ったのか何かの拍子に急に分かる様になることもままあります。ですからあまり気に病まず保留しておいて今の自分と付き合っていきましょう。

以前のインプレッションはどう扱う?

よし、じゃあ印象も変わったことだし、最初に書いたインプレは今となっては違うし恥ずかしいからもう消してしまおう

それを消してしまうなんてとんでもない!この後印象が変わったという補足の追記を付けるという形で最初のインプレは残しておきましょう。なぜならば、その以前のあなたのインプレも後続の誰かにとっては有用になる可能性があるからです。

あなたも自分が感じた事と同じ趣旨のインプレを読んだらなんだか嬉しくなりませんか?あなたのインプレは後続の人がその「これ私と同じ感想だ!そうそう、そうなんだよな~」という嬉しさを感じるための種でもあるのです。それがひいては後続の人がオーディオをやっていて楽しいと感じることにも繋がります。

この様にどんなインプレでもそれにひっかかる後続者が居る可能性があるので、恐れずにどんどんインプレを残して行くべきなのです。更に、あなたが他者のインプレによる気づきによって印象が変わっていったというその後の変遷も残したのなら、後続の人への気づきの良いきっかけにもなります。

この様に各々が積極的にインプレをネット上に残すことで、そこから様々な連鎖反応が起こり得ます。これこそが現代の建設的なオーディオ・コミュニケーションの在り方だと私は考えています。

他者から反応があったら?

何か経験豊富そうな怖い人から反応があったよ。どうしよう・・・

まずはその人の目的が建設的な意見交換なのか否か、コメントの内容を見て判断しましょう。

建設的ではない反応には?

もし、建設的には感じられない場合はとっとと話を切り上げてしまいましょう。ブロックも一つの有効な手段です。

残念ながら昔からオーディオ民の中には持論をただひけらかしたいだけ、マウントを取りたいだけ、揚げ足を取りたいだけで建設的な意見交換など頭の片隅にも無い輩が少なからず居ます。また、近年では本来の測定の意義から離れて他者を叩く棒として測定値を使用する測定教狂信者も界隈を賑わせています。

そういった輩とはレスバしても時間と感情を浪費するだけで無駄、厳しい言い方をすれば付き合った時点であなたの負けとも言えます。とっとと切り上げてもっと建設的な事に時間を使いましょう。(火遊び自体をエンジョイしたいのなら止めませんが・・・)

建設的な反応には?

逆に、建設的だと感じたら臆せず自分の感性に従って意見交換をしてみましょう。相手はあなたの書いたインプレに何かしら感じる所があってアプローチをしています。もしかすると感性が近いのかもしれません。

オーディオに於いては感性が近い人や見えている規模が近い人とは共有する文脈の領域が大きくなり、スムーズかつより深い意見交換が出来る様になります。是非色々な人とコミュニケーションを取り、その中からこういう人を数人見つけて下さい。

そしてその方々と信頼関係を築き、それをあなたのオーディオ探索における「母艦」とすると良いでしょう。母艦があれば認知の得意領域に関してより深掘り出来ますし、不得意領域を獲得しに行く際の自己肯定感の支えにもなってくれます。

但し、母艦の居心地が良いからといってその外の方々との繋がりを希薄にしたり、母艦の文脈に対して無批判な姿勢が過ぎると母艦ごと独善的な方向へ逸れて行ってしまいます。居場所があるからこそ積極的な対外コミュニケーションを取る様に心掛けたいものです。

余談ですが、この趣味は進めば進むほど意見交換の前提となる文脈を共有出来ていると感じる人は少なくなって孤独になります。分かりやすく簡単な例で言うと「ケーブルで音は変わるのか」「ミリのセッティングの微調整で音は変わるのか」といった音的な所から「アニソンの厳しい録音の捌き方」「往年の古いクラシック音源の文脈に沿った再生」といった音源に対する文脈まで多岐に渡ります。だからこそ各自が積極的に発信することはお互い自分に近しい文脈を有する人間と出会う良いきっかけを提供し合うことにもなり、とても有意義なことなのです。

経験豊富な方々も居心地の良い母艦からたまには顔を出して広く外の人間に対しても発信して欲しいと願い、今回の記事の締めくくりとしたいと思います。

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この記事を書いた人

主にオーディオについて感じた事を書いています。
古いクラシックがメインですが、新旧ジャンル問わず音楽を楽しむスタイルです。

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