DVAS Model2 試聴レビュー

期待のヘッドホンパワーアンプ DVAS (Deep Valley Audio Systems) Model2 を試聴させていただいたのでその感想を記す。
試聴はフジヤエービックさんで実施されたDVAS試聴会とフジヤさんの期間限定の店頭展示中の2回実施。前者はこのアンプ単体で、後者は私が所有していてかつフジヤさんでの視聴時のリファレンスとしているMSB Premier HPAと比較をしながら試聴させていただいた。

目次

まとめ

結論から言うと、非常にニュートラルで自然かつ総合的に穴がなく違和感が出ない優れたパワーアンプだと感じた。

モノとしての作りも良く仕上げの質感も高い。作り・音質ともに99万円(税込)というプライスタグは納得感が高くこのアンプと並べて語れるほどの総合力の高いヘッドホンアンプはMSBの2機種しか存在しない。MSB Premier HPAが12月1日の値上げで195.8万円(税込)となった現在では破格とさえ感じる

特筆すべきなのはその音色のニュートラル性。若干の明るさと若さを感じるが、スピーカー用のアンプを含めてここまで特有の音色的な癖を感じられないものは数少ない。もちろん「音色の癖が無い=無機質・脱色されている」というレベルの低い話ではなく、きちんと様々なアコースティック楽器の音色を描き分ける自在性と忠実性の高さがある。

並べて特筆したいのは穴の無さ。アコースティック楽器の再現性からEDMの音飛びや駆動まで、何を聴いても違和感が出ない。つまりは音の様々な項目で合格点を取れているということ。このレベルに在るのはMSBの2機種のみ。

音の描き方が音と音の間に若干の隙間を作るタイプのため音取りがとてもし易い。この特徴とニュートラル性や穴の無さを兼ね備える地点に落とし込んでいるのは至難の業なので、製作者の音作りの巧みさを感じる。

駆動力感も高く、鳴らしにくいDCA Stealth・Expanseを十分に駆動していた。この点は国内に正規で入っているヘッドホンアンプでは屈指であると感じる。

音触はややカラッとしており若干ドライ(Utopia SGとの組み合わせでニュートラル付近に戻る)クリーンかつクリアで透明感が高く引っ掛かりが非常に少ない

以上、総合力が高く、コストパフォーマンスも高く、自信をもって多くの人にお勧めできる優秀なアンプ。

他のハイエンド帯ヘッドホンアンプとの比較

この項ではこのアンプを検討する人が気にするであろう競合となるハイエンド帯の2つのヘッドホンアンプと比較論を記すことでこのアンプの音質を明らかにしていきたい。

vs MSB Premier HPA

両者では音の描き方に対するアプローチが異なる。MSBは超微細領域の音まで拾い上げて隙間なく音情報で埋め尽くすタイプ。対するDVASはある程度で切って(それでも違和感の出ない塩梅で収めているのが調整の巧みさを感じさせる)その代わりに音と音の間に若干の隙間を作るタイプ

私が機器の基礎性能を推し量る軸としている情報量はMSBの方が2ランクは勝る。細部の描写力もMSBの方がより細かく曖昧さなく描き切る。レンジ感は同等。この様に基礎性能はさすがにMSBに軍配が上がる。とはいえ、それらはMSBのストロングポイントでありDVASでも全く不足は感じない。現状倍半分の価格差があるのでそれを考えると基礎性能はDVASはかなり健闘していると感じる。

動的な性能はDVASの音と音との間に隙間を作るアプローチが良い方向に作用する。キレの良さを感じ易く、駆動力感の高さはDVASに軍配を上げる人も多いのではと感じる。試聴ではStealth・Expanseという駆動し難いヘッドホンを十分に駆動出来ていた。押し引きの追随性もとても高い。

両者で一番の違いを感じるのは表現力の深み。奏者のちょっとした表情の付け方やボーカリストの表現のちょっとした変化など、DVASでは感じ取れない領域のものがMSBでは多く感じ取ることが出来る実はここがハイエンドオーディオで深化していく所であり、多分に趣味的でもある。ゆえにどこまでで十分とするのかは人によって大きく異なるが、やればやるほどにその違いが分かって行くオーディオの楽しさの核でもあることを少し申し添えておく。

以上の様に、主に情報量や表現力の深みに於いてはMSBが勝るもののDVASも十分以上の能力がある。従って、聴く音源やどう聴きたいかによってどちらがその人にマッチしているかは変わってくる。個人的にヘッドホンオーディオ民全体を見ているとMSBよりむしろDVASの方を好む人の方が多いのではないかと感じる。

vs Niimbus US5 Pro

こちらは直接比較はしていないので記憶の中のNiimbusのイメージとの比較論。よって確度は落ちると思って読んでいただきたい。(この項を書きながらきちんと確認したくなったので後日直接比較をするかもしれない。その場合は追記する)この項を書く前に現在の定価を調べると122.1万(税込)で驚いた。正直そのプライスタグに相応しい音質では(自主規制

正直DVASとNiimbusでは居るステージが違うと感じる。Niimbusは製作者の音の解釈や主張・ハイエンドオーディオの文脈を載せて聴かせてくるタイプ、対するDVASはそういうステージから先に進んで音源に入っている情報を音源なりにそのまま出すことを目標としている様で、両者には見ているものの違いや製品に込めた思想の成熟度の違いを感じる。日本製でこの様なステージの製品が出て来てとても嬉しい。

試聴メモ2023.12.2 試聴会

試聴システム全景 DACはMSB Discrete DAC plus
DAC-Amp間ケーブルはDVASオリジナル(銀線)
使用したヘッドホン Focal Utopia SGとDCA Expanse
製品の剛性も高く質感も価格相応の出来

試聴環境

上流はいつものフジヤ店頭セット、ケーブルはDVAS持ち込みのオリジナルバランスケーブル(銀線らしい)、ヘッドホンは手持ちのFocal Utopia SGをメインで、主に駆動力確認用にお店で用意されていたDCA Expanseを少し併用した。

試聴システム構成
  • Transport:Silent Angel Z1
  • DAC:MSB Discrete DAC plus
    DVASオリジナルバランスケーブル
  • Headphone Amplifier:DVAS Model2
  • Headphone:Focal Utopia SG / Dan Clark Audio Expanse

音以外

モノとしての作りがとても良い。仕上げの質感が綺麗。プライスタグに相応しいモノ作り。失礼ながらとてもガレージとは思えない。
筐体は全然熱くならない
ボリュームはMSBより取れる感じ。

音質雑感

とてもニュートラル。他にないほどニュートラル。MSBよりニュートラル
いつも聞いているMSBはやや隠、こちらはほんのちょっぴり陽
マイクロ領域の追随性は限界がある
とにかく聴きやすい。かと言って上から塗り込めている感じではない。

駆動力も必要十分ありそう
→premierよりあるかも

透明感が印象的。いつも聞いているMSBは残留ノイズとまではいかないが、ここまでスッキリと背景が晴れない

試聴メモ2023.12.6 フジヤで試聴

期間限定展示機で試聴
ヘッドホンはDCA StealthとUtopia SGを使用

試聴環境

上流はいつものフジヤ店頭セット、ケーブルは試聴会とは異なりいつものフジヤのバランスケーブル、ヘッドホンはお店でお借りしたDCA Stealthをメインで、最後に少し手持ちのFocal Utopia SGを持ち込んで併用した。

試聴システム構成
  • Transport:Silent Angel Z1
  • DAC:MSB Discrete DAC plus
  • Headphone Amplifier:DVAS Model2 / MSB Premier Headphone Amplifier
  • Headphone: Dan Clark Audio Stealth / Focal Utopia SG

Dan Clark Audio Stealthで聴く

DVAS Model2を聴く

音色はやや明るめで若い。
ややカラッとしている。ウェットではない
若干キラッとしている所もある
→聞き進んでいるとほぼない
駆動力は十分。明らかにpremierより上。stealthを完全に駆動していると言っても良い
トランジェントもすこぶる良い。駆動力感は過去聞いた中で一番良く感じる
→上記2項はこの後Premierを聴いて実は駆動力はほぼ変わらないと修正
ドラムは締まりが良くタイト目な表現。たわみ感や響き等の複雑な音がやや単純化された表現
キレが良い表現
クリーンな空間
クリア
背景が静か。一般的に背景が静かなら黒いと評されるが、このアンプは白いイメージ
やや銀線らしさも垣間見える
質感はやや若干ガサつく所も
→聞き進んでいるとほぼない
とはいえ基本的にニュートラルかつ瑕疵はほぼ感じられない。何を聞いても違和感がない。響きや倍音もちゃんと出るし、アコースティック楽器の妥当性も高い。
弦楽四重奏もクラリネット協奏曲もフルオケも難なくこなす
音取りがしやすい(良い意味での分離感が程よくある)
定位感も明瞭で分かりやすい
音がゼロになる範囲がMSBより広い
イメージ的に逢瀬のスピーカー用のパワーアンプが近い。そこから逢瀬臭を抜いた感じか
深い低域がやや出切ってない?MSBの方が深さや重さを感じる。情報量の問題っぽい

MSB Premier HPA を聴く

残念ながら電源が切れていたので試聴開始時は電源オンから40分程度でまだまだ情報量や情報密度が出ていない状態

ボリュームは10程度違う(MSBの方が10程度高い値が必要)

音数が多い
音像を描写するのに使われている情報量が多い
音が太い(これはまだ温まっておらず本調子ではないのも寄与している)
音がやや近い
角が柔らかい(これはまだ温まっておらず本調子ではないのも寄与している)
実はよくよく聴いてみるとDVASと駆動力はほぼ互角だが、Premierの方が音が太く情報量が多いためキレ感が出ず駆動力「感」もやや落ちて感じる。
音がほぼどこでもゼロにならない。0.1とか0.2の超微細領域がきちんと描写されている。比較するとDVASは0.5以下の音は全て0にしている。
情報量が多過ぎてやや暑苦しいと感じる人も居そう
情報量が空間に比べて多すぎて音が飽和するきらいがあると感じる人も居そう
音色はやや濃く熱く暗い

直観的にMSBよりDVASの方が多くの人に受け入れられそう

Focal Utopia SGで聴く

やはりUtopia SGは本当に色々な項目が良く把握出来る。Stealthでは見えにくくもどかしかった所がいとも簡単に見えてしまう。今まで何度も感じてきたがやはり現在日本に正規で入っているヘッドホンでは頭2つ以上抜けている。
DVASは音を単純化しているというか情報が出切っていないところがある。これに尽きる
試聴会でニュートラルだと感じたのはUtopia SGとの組み合わせのバランスも寄与していたことが分かった。先ほどまでのStealthとの組み合わせよりニュートラルに感じる。

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この記事を書いた人

主にオーディオについて感じた事を書いています。
古いクラシックがメインですが、新旧ジャンル問わず音楽を楽しむスタイルです。

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