Roon+グラボメソッド紹介

先日書いた記事(下記リンク参照)でRoonおよびグラボの仮説や私の今後の方向性について触れたが、そもそもPCにグラボを入れてRoonの音質をブーストする方法論についてあまりご存知ない方も少なからずいらっしゃるはずで、その方々には分かりにくい内容となってしまったことを反省している。そこでそんな方にもさっくりと概要をご理解いただける様に今回はRoon+グラボメソッドについて紹介していこうと思う

※注※
今回取り上げるメソッドはあくまでグラボを入れてRoonを単独で使用するものである。
グラボを使用する代表的な方法論としてHQ playerを使用したRoon再生があるが、それとは別物なのでご注意いただきたい。

目次

Roon+グラボメソッドの歴史

まずはこの方法論がいつ頃に始まったのか、また、どういう経緯を経て現在まで至っているのかを記す。

起源(2021年秋頃)

「Roonの再生での音質にグラボが効くらしい」という事は2021年秋頃にMF氏によって発見・確立されたものだ。

発見のきっかけは、それまで小型多筐体PCによる負荷分散の思想でRoon再生を研究していたMF氏が色々なCPUを扱っている中で、CPUの性能もそうだが、内蔵グラフィックスの性能でもRoonの音質が向上している様に感じたことに端を発している

その後MF氏が多筐体から素性の良いハイエンドPC1筐体の思想に移行する際に、試しにミドルクラスのグラボとエントリークラスのグラボでの音質を比較したところ、Roon再生での音質にグラボが効くとの確信を得た。そしてすかさずハイエンドグラボ(RTX 3090)を導入、この方法論が本格的に始動することになった。

発展期(2021年10~11月頃)

その後MF氏の怒涛の研究により

第二形態:ライザーカードによるグラボの電源+震動分離

最終形態:グラボのデュアル化

とメソッドは短期間で急速に発展する(2021年10月~11月頃)

この時期の各検証に私も夜な夜な車を飛ばして付き合わせていただいた。劇的に音質が良くなるネタが毎回の様に飛び出し、脳汁がドバドバ出る至福の数週間。私のオーディオ人生の中でも屈指の楽しい時間を過ごさせていただいた。

発信と普及期(2021年秋頃~)

この方法論はまず創始者のMF氏自身がPhilewebコミュニティで逐次経過を発信していた。(現在は残念ながら閉鎖されていて見れない)その後、Twitterでもこの方法論を取入れたグルマン氏が中心となって度々発信されてきた。特にグルマン氏の煽り性能の高い魅力的な発信により、Twitterスピーカーオーディオ界隈でこの方法論の認知度が上がり、取入れるフォロワーが増加していった。

現在

現在でもハイエンドグラボ(現在ならRTX 4090が主流)をデュアルでライザーカードを介して使うのがこのメソッドの最終形として主流となっている。

この記事を書いている2024年5月現在、私の観測範囲ではおよそ10~20名規模でこのメソッドの利用者が居る様に思われる。

Roon+グラボメソッドの音質

続いてこの方法論の音質について記す。ここではその進化が分かりやすい様に進化の段階ごとに分けて書いていく。

第一形態:ハイエンドグラボシングルによる音質変化

まずはこのメソッドの第一形態となるハイエンドグラボシングルをマザー直結にした時の音質変化から記す。(内蔵グラフィックスからの変更をイメージ)

  • 音像の厚みが増す
  • 全体的な情報量が増えて表現力が濃くなり音楽の説得力が上がる
  • ノイズはやや増えて細部が甘くなる
  • やや大味になる

第二形態:ライザーカードによる電源+振動分離による音質変化

続いて第一形態からライザーカードを使った際の音質変化について記す。

  • SNが上がる
  • 見通しが良くなる
  • 細部の曖昧さが少なくなる

最終形態:デュアルグラボ(+ライザー)による音質変化

最後に、第二形態から更にハイエンドグラボを積み増し、それもライザーカードを使用して繋げた時の音質変化を記す。

  • 質感がなぜか良くなる
  • 表現力がなぜか向上する
  • スケール感が増す
  • 情報量が更に増える

音質まとめ

最終形態の音質傾向をまとめると以下になる

Roon+グラボメソッドの音質傾向

Pros

  • 音像・音場共に情報量が増える
  • 音像の厚みが増す
  • 深みのある濃厚な表現力
  • 音楽の説得力が高くなる
  • 丁寧な質感描写

Cons

  • 細部の描写は若干アバウト
  • 見通しは若干悪い
  • Prosの項目が音源忠実かは疑問符が付く(色々と盛り過ぎ感がある。でも説得力のある表現)
  • なぜグラボでRoonの音質がここまで変化するのか理屈が分からない

見ていただけると分かるように、いわゆる従来のPCオーディオやネットワークオーディオにあった音質イメージのおよそ逆を行く傾向がこのメソッドの特徴だ。元々の音源に入っている情報からやや盛り過ぎ感も感じさせつつも、それ以上に破格の音楽としての説得力を持ち合わせており、(2021年時点でのPCパーツ構成では)グラボ無しの音質と比較すると、このメソッドを活用した方がより深く音楽を味わうことが出来ていたことは紛れもない事実だった。

Roon+グラボメソッドの果たした意義

ここからはより私の主観が大きく入るが、このメソッドの果たした意義について書いていきたい。

オーディオメーカーによる価格ヒエラルキーからの解放

今さら言うまでもないことだが、オーディオ機器をユーザーに提供する行為をメーカーや代理店、ショップは「商売」としてやっている。従ってメーカー製である時点で音質と価格のヒエラルキーは大筋で順当に付けられているそれは比較的新しい方式であるPCオーディオ、ネットワークオーディオ機器に於いても同じで逃れられない

しかし、自作PCはそのヒエラルキーに属さない。やりようによっては比較的安価にメーカー製の価格ヒエラルキーの高い音質を得ることも理屈としては可能だ。

とはいえ、理屈上はそうであれ、実際はなかなか自作PCでヒエラルキーを覆すことは簡単ではない。その一番のネックが自作PCオーディオ・ネットワークオーディオの音の細さと薄さである。

高性能な機器を使っていると分かって来るが、高性能な機器になると音をより解して細かく表現できるようになるが故に細身で厚みや質量感の無い説得力のない音楽になりがちな宿命がある。そこで物を言ってくるのが物量である。だからメーカー製のハイエンド機器は筐体や中身をみっちりと作り込み、高性能が故に不足しがちな厚みや質量感や音楽の説得力を出して来る。

一方で、自作ではそういった物量作戦を取ることはかなり難しい。市販の筐体や電源はメーカー製のハイエンド機器のレベルを入手することはほぼ不可能である。結果、高性能だが細く薄く説得力のない音になってしまい、やはり自作は限界があるのか・・・となりがちだった。

そんな中、このメソッドによる出音はまさにその自作で不足しがちな項目をガッツリと補ってくれる。そのおかげでメーカー製のハイエンド機器から見劣りをしない厚みや音楽の説得力を得ることが出来る。

その結果、このメソッドを使用すれば価格ヒエラルキーからの解放が比較的簡単に成せるのだ。この意義はかなり大きいと感じる。

情報量を処理できる脳を持つオーディオ民の育成

このメソッドでは良くも悪くも情報量がドバドバと抜群に出てくる。その情報量こそがCDトランスポートとPCオーディオとの一番の差なのだが、巷を見ていると豊富な前段の情報量をうまく受け止められない方々も結構多く居らっしゃる。そういう方々は聴き慣れたCDトランスポートの情報量を大きく超える情報を上手く脳が処理できていない様に見える。

だがこれは個人の能力ではなく、単に慣れの問題である。慣れる速度の差はあれど、誰でも情報量の多い上流の音を聴く経験を積めば次第と処理能力が脳に備わって来る。備わって来ればそれまでの自分の認知の殻を一つ破ることが出来て、音楽の聴き方の視界がパッと開ける。情報量は音楽再生における根幹なのでその処理能力はかなり大きく物を言ってくる。それこそ世界が変わる位に。

このメソッドによる出音は、そういう豊富な情報量を処理できる能力を開花させる大きなきっかけとなる。実際このメソッドをフォローした方々を見ていると、その言葉の端々から「あ、この人視界が一気に開けてきたな」と感じることも少なくなかった。

この様に使用者の処理能力、ひいては認知の育成に一役買うことが出来るのもこのメソッドの果たした意義として大きいものがあると感じる。

あとがき

以上、駆け足だがざっと私が把握しているRoon+グラボメソッドについての諸々をまとめてみた。Roonの仕様の改定や音質傾向の変化から最新buildでは全盛期の様な効果は出ないが、それでもまだ有効なメソッドであることは間違いない。また、最新buildに拘らない場合はroon legacyであれば効果は十全に出せる。

この記事を読んで少しでも興味をもっていただけたのなら、是非一度チャレンジしていただきたい。その価値は十分ある方法論だと思う。

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この記事を書いた人

主にオーディオについて感じた事を書いています。
古いクラシックがメインですが、新旧ジャンル問わず音楽を楽しむスタイルです。

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