Riviera AIC10-BalでHiFiMAN SUSVARAを鳴らしきる

今回の記事はRivieraのヘッドホンアンプAIC10-BalでHiFiMAN SUSVARAを鳴らしきったのをショップで聴かせていただいたのでその試聴レビューについて書いていきたい。ショップさん、貴重な機器の試聴機会をいただきありがとうございます。

この組み合わせを聴けば日本全国のSUSVARA鳴らしきれない民は成仏間違いなし。是非ともこの組み合わせを聴いて長年に渡る想いを成仏させて欲しい。南無阿弥陀仏。。。

Riviera AIC10-BalとHiFiman Susvaraについて

Riviera AIC10-Bal

  • スペック等の詳細は代理店さんのHPをご参照
  • 真空管とトランジスタのハイブリッドアンプで、ヘッドホンアンプとしての使用法のほか、スピーカーに接続してプリメインアンプとしても使用可能
  • 駆動力には定評があり、海外では駆動させるのが大変なヘッドホンの代名詞であるSUSVARAを鳴らしきるヘッドホンアンプとして有名らしい
  • 2024年5月末現在の価格は¥3,740,000(税込)。日本に入っているヘッドホンアンプではMSB Electrostatic Headphone Amplifierの¥4,510,000(税込)に次ぐ高額機で、MSB Dynamic Headphone Amplifierの¥3,058,000(税込)よりも高額となる

HiFiMAN SUSVARA

  • 2017.6.9発売。価格は¥660,000(税込)
  • 鬼の感度84dB, インピーダンス60Ωで発売当初から鳴らしきれないヘッドホンオブザイヤー7年連続受賞()
  • 2024年6月ようやく待望の後継機Susvara Unveiledが発表される。価格は¥1,188,000(税込)で早速ヘッドホン界隈をザワつかせる。発売日は7月12日。こちらは感度86dB, インピーダンス45Ωだが果たしてどの位鳴らし易くなっているのだろうか?
目次

Riviera AIC10-Bal with SUSVARA音質まとめ

音質まとめ

Riviera AIC10-BalをSUSVARAで鳴らした場合の音質について以下に要点を纏める。基本的にこの内容はRiviera AIC10-Balでの音質評価と読み替えていただいても問題はない。なおゲイン設定は「HP-High」ポジションの方が明らかにSUSVARAの駆動力が上がりキレが良くそれに伴い音色・質感方面もネガが取れて好印象だったためその設定での印象となる。

Riviera AIC10-Bal with SUSVARAの音質

Pros

  • エモーショナルな表現力
  • 駆動力が抜群に高い
  • スケール感が大きい
  • 質量感や厚みが良く出る
  • 雑味のある粗い表現も可能(この特性はレア)
  • 質感はしっとり滑らか
  • 音色は彩度が高く濃厚
  • 上記の諸項目においてやや盛り気味ながら忠実性から外れるまでは行かない絶妙なバランス感覚

Cons

  • SNは高いとは言えず見通しはあまり良くない
  • 質感と音色が盛られていて全てがリッチで血色が良い方向に偏る
  • 基礎性能もそれなりにあるが価格からすると低い(マイクロ方面が苦手)

はい、上記を見てお分かりの様にべた褒めです。最近のこのブログは褒めることが多い気がするので「こいつチョロいな」と思われるかもしれないが、実際良かったので素直に褒めまくります。いやー素晴らしいっす。素晴らしいシステムを通して音楽を聴き終えた時の満足感・幸福感は他では得難いものがありますね。これだからオーディオはやめられない。

Riviera AIC10-Balの音質についてザックリ表現すると、音源の感情的・動的方面を上手くキャッチアップしてくれてそれを聴者に伝達する訴求力がすこぶる高いアンプ。そして、それでいながら諸々の忠実性から違和感が先に立つほど踏み外さないこの両立が素晴らしい

私の経験上、このRiviera AIC10-Balの様に感情的・動的な方面を上手く煽ってくれる機器はいくつかの項目で忠実性から大きく外れてしまい、ある程度聞いているとそこの違和感が気になってしまうものが大半。例えば質感を上塗りし過ぎてその下の音源なりの表現や表情が見えなくなったり、スケール感や推進力が高くグイグイ音楽を引っ張ってくれるが繊細な表現が出なかったりということになりがち。

しかし、このRiviera AIC10-Balはその辺りの音源なりの素の情報の残し方が絶妙。音楽を上手く彩りながら、聴者を煽りながらも音源に込められた音楽の改変にまでは至らない。この辺りは製作者のセンスとバランス感覚の成せる業だろう。この落とし所の決め方こそが本来の「多様性」と言える

これまでも時折書いているが、音源の再生においてはその音源の製作側およびその音源を愛するリスナーをひっくるめた界隈が共有するコンテクストをいかに再現するのかが肝要。そういう観点では往年のジャズやロック、更にはライブ盤あたりは音源に入っている情報をそのまま高忠実に出すだけでは不足を感じることも多い。これは上記の界隈のコンテクストと音源の素の状態との乖離が大きいからである。Riviera AIC10-Balはまさにそういった乖離を埋めてくれる能力があり、音源の素の状態では界隈のコンテクストの再現に届かない場合での有力な解となりうる

Riviera AIC10-Balにマッチする音源はそういう類の音源で、往年のジャズやロックやライブ盤等への親和性が高い。それらでは基礎性能や音源忠実性の高さに振っているMSB Dynamic Headphone Amplifierでの再生と比較しても、コンテクストの再現性という意味では勝ると感じる。音楽の熱さや良い意味での雑味、ちょっと踏み外した様な表現、こういった所を上手く引き出せる音楽的な懐の深さがRiviera AIC10-Balの本領と言える。

私自身もこのRiviera AIC10-Bal with SUSVARAのシステムを聴いていて、自分のメインシステムでは出ない音楽表現に引き込まれ、「こんなサブシステムあったら楽しいだろうな」と強く感じる試聴となった。(なお価格・・・)

SUSVARAを鳴らしきる

今回Riviera AIC10-Balで鳴らしたSUSVARAを聴いて、私が今まで聞いてきた色々な「SUSVARAを鳴らし切る」アンプ群とは「鳴らしきる」に含まれている内容が違うと感じた。どこが違うのかと言うと、Riviera AIC10-Balはただ駆動させることだけに留まらず、SUSVARAの音質の特徴を理解して上手く過不足をケアしているかの様な音質に組み合わせるとなるのだ。

SUSVARAとRiviera AIC10-Balのセットでは異常にバランスが良くかつSUSVARAとRiviera AIC10-Balのそれぞれのストロングポイントもより映える結果となっている。では具体的なこのセットでのマッチングの良さを挙げて行こう。

SUSVARA単体は音像の周辺の描写を抑えることで音像の芯を軸にしたスリムかつダイレクトでハイスピードな音像表現が特徴だが、その反面一定以上の高性能高忠実なシステムに入れると良い意味でのシステムの曖昧さに助けられなくなり音像のペラさと成分の不足が露になってしまう傾向にあった。これをRiviera AIC10-Balは上手く補強してくれる。やや肉付きが良く血色が良い音色はそれらが不足しがちなSUSVARAの弱点を上手く埋めてくれて、それでいながらダイレクト感やハイスピード感は抜群の駆動力と雑味も出せる表現力でスポイルしない。

SUSVARA単体では広大だが立体感に乏しく平面的でペラかった音場にも上手く雰囲気成分を足してくれて立体感とただ広いだけでない伸びやかなスケール感を出してくれる。

等々、本当に上手くこの組み合わせは出来ている。基本的にマッチングというものは偶然の産物で狙えるものではなく、それを軸にシステムを組み立てるのはただギャンブルをしているだけで評価できないという基本スタンスを取っている私もこのマッチングの良さについては例外的に認めるしかないほどの効果がある。

これまでのSUSVARAを鳴らし切るアンプは、あー確かに鳴らしきっているね。でも鳴らしきった結果SUSVARAの厳しい面を顕在化させてしまっているけどそれはどうするんだい?と聞きたくなるパターンもあっただけに今回のRiviera AIC10-Balのケアの仕方には感銘を受けた。

システムの情報量マッチング

上記の様に今回の試聴では好印象だったが、これは上流から下流までシステム全体の情報量のマッチングが良かったことも理由として少なからずあると感じる。例えば手前味噌ながら拙宅のメインシステムの上流で聞くと今日の様ないい感じにはならなさそうではある。イメージとしてはより上流からの情報量が増えることで、その情報が見え切らない、捌き切れない不足感を感じてしまうことになると思われる。また、SUSVARAのペラくて厳しい面やRiviera AIC10-Balの真空管起因の歪みなんかも気になって来るかもしれないと予想する。

今回は良くも悪くもそこそこの情報が出る上流だからこそのバランスで、これが上手くハマったことが好印象に繋がっている。これをThinking Audioでは「システムの情報量マッチング」と表現しており、当サイトの考え方の主軸の一つである。詳細はまた別の機会に書く予定だ。

試聴環境

今回の試聴はいつもの中野のショップさんで行った。いつもありがとうございます。

試聴システム

Silent Angel Z1

Boulder 812

Riviera AIC10-Bal

HiFiMAN SUSVARA or Focal Utopia SG(少しだけ)

今回の試聴で地味に効いていたのがDACとして使用したBoulder 812。ある程度の基礎性能を有していてかつ音に品位の高さがあり、色々と盛り気味のRiviera AIC10-Balを使用するベースとしては適任で上手くその良さを引き立ててくれていた様に感じる。なおBoulder 812については自宅試聴した際のレビューも併せてご参照いただきたい。

音源別感想

試聴で聴いた音源別の感想を記す。最初はUtopia SGとSUSVARAの両方でRiviera AIC10-Balを試聴するつもりだったが、あまりにSUSVARAとのマッチングが良かったため、途中からほぼSUSVARAとRiviera AIC10-Balを組み合わせた感想のみとなっている。(以下特記のない場合はSUSVARAを合わせた時の感想)

Aurora: Animal

・Utopia SG
結構まとも
思ったより脚色は強くない
しっとり滑らか
嫌な音が出ない系
濃ゆい

・SUSVARA
Rivieraと相性が良い
サスバラの薄い所をうまく補強してくれる

Infected Mushroom:

押し引きも良く音色も良くこれだけ聞いてたら何の不足も感じない

ずっと真夜中でいいのに: ハゼ

ACAねの声がメリケンの恰幅の良いお姉ちゃんになった感じw
ボーカルの中域が結構盛られて肉付きが良くなる

(K)NOW NAME: DDD

やはりSUSVARAを鳴らし切っていると言って良い
低域の制動が完全に効いてる

Zedd: Addicted

めっちゃ歯切れ良くて気持ち良い
この組み合わせEDMが良すぎる
キレよりもグルーヴ感が楽しい

Steve Smith

Boulder 812直結ではSUSVARAは駆動出来ていないことがRivieraに繋ぐと良く分かる。Boulder 812では上っ面を撫でただけの様なドラミングになる
熱気や汗成分が出る
ベースの低域そんな低くない所はやや階調感が落ちる。局所的に制動が落ちる苦手な帯域がある?

NieA: 美しき

見通しはあまり良くない
演奏に熱量を感じる
でも忠実度に問題があるとは感じない。うまい
ボーカルはやはり恰幅が良くなる
音楽の熱量とスケール感を出してくれる

ボナマッサ

・SUSVARA
やはり合う
冒頭のドラムの迫力が良い
ボナマッサのギターの浸透力が良い
ボーカルも良い
音楽を楽しさや熱量で訴求する
かと言ってそこまで忠実性を外してはいない

・Utopia SG
SUSVARAの方がダイレクト感があって合う
SGの方が音が高級になった感じ
SUSVARAの方が良い意味で荒々しさが出る

Grace Mahya: Sunny

やはりこれも合う
熱気
ノリ
ある程度の雑味
ダイレクト感

忠実性を担保した上でのエモーショナルかつダイレクトな演奏が鳴る

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この記事を書いた人

主にオーディオについて感じた事を書いています。
古いクラシックがメインですが、新旧ジャンル問わず音楽を楽しむスタイルです。

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